第1回 プロローグ

きちんとしたオーディオシステムを組むと、音楽の印象がガラッと変わる

●「いい音を聴きたい」という欲求に素直になろう!

貴方が普段音楽を聴いている機材はなに? iPod? それとも他の携帯音楽プレーヤー? それは室内でも使っているのだろうか? その音に十分満足しているのならば構わないが、iPodに代表される携帯音楽プレーヤーのほとんどは、音楽信号のディテイルを間引いて(圧縮して)記録していることをご承知だろうか。つまり、そこから流れ出てくる音は、音楽の本当の姿ではないということだ。

もちろんiPod等を否定するつもりは毛頭ない。音楽を持ち歩き、気軽に楽しむというスタイルやその利便性は大いに認めるし、配信という新しい音楽の捉え方を提案したことは、音楽ビジネスの活性化につながったと思う。

しかしその一方で、音楽と私たちの関わり合いが、少しイージーになり過ぎたように感じはしないだろうか。

つまり、アーティストが精根込めて制作した作品(音楽)を、私たちリスナーは安直に扱ってはいやしないか? 楽器が醸し出す微かなニュアンスや複雑に計算されたアレンジなど、音楽の微妙な雰囲気が携帯音楽プレーヤーでは損なわれているように思うのである。

では、どうすれば音楽の真の姿を享受することができるのか。それは、きちんとしたプレーヤーやアンプ、スピーカーを使って再生するということだ。

誰だってマズいものよりは美味しいものを食べたい。音楽だって同じだ。好きなアーティストの演奏をさらにいい音で聴きたいという欲求は、自然な気持ちだと思う。そうした欲求に素直になって、いい音のするオーディオシステムを揃えようではないか。


●音の個性を決定づけるスピーカーを中心に選んでみよう

では、どんな手順で自分の好みに合うオーディオシステムを揃えればいいのか。まずは自分のお気にいりのCDを持って、オーディオ専門店に足を運んでみよう。近くにそういうお店がなければ、メーカーのお客様相談センターや輸入代理店などに電話してお店を紹介してもらうといいだろう。

その際に明確にしておきたいことは、自分が準備できるトータルの予算と、設置する部屋のサイズ。さらには、一人で使うのか、家族も一緒に使うのかという点だ。

真っ先に選ぶべきアイテムは、スピーカーである。再生される音の個性を決定づけるのは、スピーカーが占める割合がひじょうに大きいのだ。

デザインやサイズももちろん重要だが、好きなアーティストの演奏が自分のイメージ通りかそれ以上にリアルに感じられ、 小原氏愛用のスピーカー群 そして音楽が心地よく感じられるスピーカーを試聴を通して見つけたい。トータルの予算の半分ぐらいをスピーカーに当てるぐらいのつもりでいてもいい。 小原氏愛用のスピーカー群

●姿・形だけでなく、カラーリングや操作フィーリング、付帯機能も大事だ

スピーカーが決まったら、残りの予算の中からCDプレーヤーやアンプを選ぶわけだが、この時に大事なことは、デザインやカラーリングだけでなく、操作する際の感触である。つまり、指先に感じるスイッチ/ボタンの具合や、ボリュウムの滑らかさや重たさなど。スピーカーに直接触れることはないが、CDプレーヤーやアンプは、切り替えたり、音量を調整したりなど、触れることが圧倒的に多い。自分のフィーリングに合うか合わないかという点はとても重要である。

また、備わっている機能にも注意を払いたい。低音・高音の調整が可能なトーンコントロールはついているのか、リモコン対応か否か、表示部の明るさは調節できるのか等など。それがあるか否かが製品の価格に反映されていたりもするので、自分にとって必要な機能かどうかという判断や見極めが重要だ。


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●予算に合わせたシステムプランを、製品カテゴリー別に順次紹介

小原氏愛用オーディオ機器の一部

ともあれ、ある程度の知識を伴い、経験を経ないと、自分の感性に合うオーディオ機器はなかなか絞り込めないかもしれない。

そこで本連載では、それぞれの製品カテゴリーごとにその製品にはどんな役割があり、どんな点に注意して選べばよいかをわかりやすく解説していきたいと思う。

小原氏愛用オーディオ機器の一部
また、筆者の試聴経験や視点から、価格帯ごとに推薦モデルを挙げ、その特質や個性を紹介したい。システムを組む上での参考になるようなキーポイントも併せて述べたいと思う。

さらには、CDプレーヤー、アンプ、スピーカーといったメイン機器だけでなく、最近人気が再燃してきたアナログプレーヤー、携帯音楽プレーヤーのヒットで俄然注目が集まるヘッドフォン、別途揃えることでさらなる音質向上が図れるようなアクセサリーといった脇役たちも紹介していこう。


●しっかりとしたオーディオシステムは、所有する喜びを味わわせてくれる

高価な製品ばかりを集めれば素晴らしい音のシステムが完成するとは限らないのが、オーディオのおもしろいところ。つまり、組み合わせの相性という問題が厳然とあるのだ。数万円の機器を組み合わせたシステムの方が、何百万円もかけたオーディオよりもいい音がするといった事態はいくらでも起こり得る。

本連載を通してオーディオシステムに興味を持たれ、最終的には組み合わせのプランが自然と立てられるような連載を目指したい。

きっちりと考えられたオーディオシステムは、使う喜びや所有する喜びを持ち主にもたらしてくれる。結果としてそれが音楽の微妙なニュアンスを掘り起こしてくれることになり、音楽への愛着や親しみも深まるというものだ。

そうやって愉しめる音楽やオーディオ機器は、一生涯の宝物となるに違いない。 小原邸のオーディオルーム

音楽のない生活は考えられないという人にこそ、しっかりとしたオーディオシステムを組んでほしいと思う。

小原邸のオーディオルーム

小原由夫プロフィール

小原由夫(おばら よしお)
理工系大学卒業後、測定器エンジニア、雑誌編集者を経て現在はオーディオ&ビジュアル評論家。
自宅では業務用スピーカー(5本同一モデル)によるマルチチャンネル再生システムを組むなど業界きっての実践派として活躍する。

主な執筆誌は、Hi-Vi、ホームシアター、管球王国、ステレオサウンド(以上ステレオサウンド社)、CDジャーナル(音楽出版社)、日経エンタテインメント!/大人のロック!(日経BP社)など。
主な使用機器 (オーディオ用 1/22現在)
CDプレーヤー: Studer/A730
DACWeiss/MEDEA
プリアンプMark Levinson/No32L
パワーアンプJeff Rowland Design Group/Model201
スピーカーPMC/MB1
他、多数。

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